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人生はブルマー

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「君は風紀委員のくせに ズボンの下にブルマーをはいているっ!」

「ううっ……ばかな、俺がぱんつのかわりにブルマーをはいているとでもいうのか」

「ちがうっ 君はチェックのガラパンの上にはいているんだっ どうだ!」

俺は冷や汗をぬぐった。まずい

「千里眼、な、なぜそれを……」

「いったはずだ、僕は千里眼、なんでもわかるのだ 勝負あり! 洋次子さんはいただいた」

「いいや、君は俺んちのフロ場をのぞいたんだ。風紀委員としてうったえるぞ」

「すると君のブルマーもバレるぞ」

「だが、君ののぞきもバレるんだ」

俺達はにらみあった。1分、2分……。

「こ、この勝負ひきわけだ。」

「ああ、いいとも」

「さらばだ 都道府県太くん!」

大江千里眼は「シュワッチ」とさけびながら走っていった。

「なんだって 千里眼に秘密を?」

「そうなんだ。しかもあいつも洋次子さんを愛しているんだな。」

「そいつぁまずい うーん……」

浩は考え込んだ。

「いそぐんだ県太。千里眼より先に告白するしかない。アタック作戦その3は“男らしく大声で告白方法”だ。」

「男らしく?」

「そうだ、次の授業中にたちあがって『俺は君が好きだあー』とのたもうんだ」

「うそだろ……」

「本気さ。男らしいだろ。がんばれよ県太」

俺は覚悟をきめた。打倒千里眼!

授業が始まった。俺は何度もしんこきゅうした。前のほうで浩が手をふっている 次、いくぜ、洋次子のためだ。俺はたちあがった。

「好きだっ 俺の愛は宇宙より広い!」

教室中しーんとした。加馬本先生もホッペケペーをいわない。と、千里眼がたちあがった。

「だまれっ あぶらあげけんたっ」

「あ、あぶらあ……」

「そうだ、おいなりけんたっ がんもどきけんたっ おまえのじーちゃんとうふ屋だったろっ ぬけがけするなんてゆるせーんっ!」

「千里眼こそっ おまえのかーちゃんフロ屋に嫁にいって3日で帰されて弁当屋も自動車修理工場も追い出されたんだろっ」

「県太のとーちゃんはでべそだっ 僕も洋次子さんが好きさっ!」

「千里眼のねえちゃんはチカンを8回もほどうして けーしそうかん賞もらい、けーし庁殺人課の課長んとこ嫁いったろ」

「けんたのばーちゃんは今130さいで とくぎはサーフィンだっ」

「千里眼の妹は忍者ハットリくんのけぐまきのファンだっ」

「だまれっ ブルマー男っ」

「うるさいっ へんたいのぞき魔」

そのとき、加馬本先生が2人のあいだに入った。

「おいおい、そんなにけんかするなら、けっとうしたらどうだいホッペケペー」

「けっとう?」

「そう ホッペケペー 例えば……うん、ギャグけっとうなんてどうかな」

「ギャグ?」

「ギャグを連発して、たえられなくなったらまけだ。にんたい力とユーモアが必要だぞホッペケペー どうだ今日の放課後くらい」

俺は千里眼をにらんだ。むこうもにらみ返す。バチバチッ。

「よっし! やってやろーじゃんか!」

ヒューヒューヒュー 北風のひびく荒原にカバ組の生徒全員が集まった。俺と千里眼がにらみあうそばで、谷野洋次子がふるえている。

「いくぞ、よーいホッペケペー!」

加馬本先生の合図ではじまった。俺がさけぶ。

「ブタがぶった! トラにとられた! かばのカバー!」

「中田はなかだ! 前田はまえだ! 横田はよこだ!」

「君は運送屋かい? うん、そうや!」

「君はうんぱん屋かい? ううん、ぱん屋!」

「兄貴の日記」

「たいにあいたい!」

「うちだのうちだ!」

「山本くんは山もっとー 山根くんは山ねぇ、山田くんの山だっ!」

千里眼の足がふらっとした。チャンス! 俺はさけんだ。

「福田の服だっ!」

千里眼は「キエーッ」とさけぶと その場に倒れた。勝ったのだ!

「やっ、やったぞ県太。洋次子はおまえのもんだっ」

浩がかけよった。

「みなさんやりました。われわれ川口たんけん隊は……」

スピーチしている浩をほっといてみんな、俺と洋次子にかけよった。あー し・あ・わ・せ。そのとき洋次子がさけんだ。

「あの、みんなきいてください。あたし、おとうふくんとつきあうわけにはいかないんです!」

奈落の底。

「ど、どうして洋次子さん?」

「あたしは洋次子じゃないんです。洋次朗なんです!」

ぼうぜんとしている俺達の前で、彼女はいや彼はかつらをふりおとした。その下からでてきたのは……伸びかけの野球部カットだった。

「よ、洋次子さん、君は……」

「そう、男なんです。小さな時から乳母3人姉6人妹5人の中で育ったので、こんなオカマになってしまったんです。ただの女装しゅみなんです。だからおとうふくん、あたしとあなたは友達でいましょう」

俺は目をみひらいてたちすくんでいた。

「そういや、ここは男子校でしたね」

浩がマイクをもったままつぶやいた。

悲しい初恋だった。

人生はブルマー終


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