

一人住まいの女性がマンションから転落して死亡した。自殺ではない。何者かが彼女を殴って昏倒させ、突き落としたのだ。警視庁捜査一課の刑事・内海 薫は、被害者の恋人が犯人であると直観する。犯人は時限装置を用いて犯行時間を偽装し、アリバイ工作を行ったのだ。物理トリックを暴くため、薫は草薙から湯川 学への紹介状をとりつける。事件捜査から身を引いた湯川を、再び現場へ向かわせることができるのか。薫の手腕が問われる。
帝都大学理工学部に助教授として在籍中、「メタルの魔術師」の異名をとっていた友永幸正は、脳梗塞の後遺症のため現在は車椅子に頼って生活をしている。かつての教え子が彼の自宅に集うことになっていた日に惨劇は起きた。離れが火事になり、長男の邦宏の他殺体が発見されたのだ。かけつけた捜査陣の前に、招待客の一人であった湯川 学が姿を現す。湯川は、友永の言動に不審を感じ取っていた。彼は何かを隠しているようなのだ。果たして事件との関連は……?
湯川 学の大学時代の友人・藤村は、ペンション経営者だ。その彼のペンションの泊り客が、部屋を抜け出して崖から転落死するという事件が起きた。藤村から事件の背景を解き明かすよう依頼された湯川は、現地で調査を開始する。死亡した泊り客の部屋は、施錠され、一種の密室になっていた。その点は確かに怪しかったが、湯川の嗅覚はほかにも不審なことを嗅ぎつけていた。当日の状況について調べるうちに、彼は意外な真相にたどり着く。
留守番中の老婦人が強盗殺人の犠牲者になった。現場からは、十キロもの金塊が消えていたという。捜査の過程で、被害者宅を覗き込む保険外交員の女性が目撃されていたことが判明した。その中学生の娘が、奇妙な行動をとり始める。水晶の飾りがついた“真実を教えてくれる振り子”を使って、被害者宅から消えた犬の死体を捜し当てたのだ。母親の無実を証明するために水晶の力を使ったと称する彼女の言葉に裏はないのか。科学的な根拠を検討するため湯川 学に出馬が求められる。
「悪魔の手」と名乗る者によって、警視庁に怪文書が送りつけられてきた。見えざる手によって人を葬ってみせるとする内容で、湯川 学に対して挑戦の意志を示していた。やがて送られてきた第二の挑戦状で、悪魔の手は実際に手を下したと宣言する。手紙に記されていた被害者は実在し、建築現場で転落死を遂げていた。だが、どう見ても事故死にしか思えない状況だ。現場に姿を現さず、指の一本も触れることなく人を死なせる手段とは一体何か。
収録作五篇のうち、「指標(しめ)す」は書き下ろし作品だ。長篇と同時に短篇集が読めるだけではなくて、さらに一篇が雑誌未発表の新作、というのが作者の準備した二つ目のサプライズなのです。
『探偵ガリレオ』にはオカルト現象を科学の力で解明するという統一テーマがあり、続篇の『予知夢』ではさらに心霊現象の要素が強化されていた。『ガリレオの苦悩』も前二作の路線を踏襲した連作集であるが、今回は湯川自身が深く事件に関与した作品が多いという特色がある。