私たちは若いころ、本の魅力、雑誌の面白さに取りつかれました。長じて職業を選ぶとき、大好きな本や雑誌の世界とかかわってみたい、本や雑誌の作り手の側、送り手の側に立ってみたいと思い、幸運にもその願いがかないました。文藝春秋の社員は約370名。ほぼ例外なく同じ思いを共有し、それが社の最大のエネルギー源となっています。
「会社案内」を手にされた皆さんは、1頁目から順を追って読むよりも、まず関心のある部署の頁を開かれると思います。「週刊文春」「Number」「CREA」等々が面白かった、あるいは話題作単行本や愛読する文庫本の発行元が文藝春秋だった、さてどんな職場なんだろう、と興味を抱かれるのではないでしょうか。それは我々にとって、とてもとても嬉しいことです。
でもせっかくの機会。「会社案内」を、全頁ゆっくり読んでみてください。志望動機がひとつの窓口(部署)だとすれば、他にもいろいろな窓口があり、その全体が文藝春秋という会社だと知っていただきたいのです。
編集部の現場からは、楽しいばかりじゃないけれど、やっぱりやりがいのある面白い仕事だという生の声が聞こえてきます。いっぽう、写真部、広告局、営業局の頁を読めば、編集の立場とは異なる本や雑誌のとらえ方、向い方があると気づくはずです。
出版社は、外部にある製紙会社、印刷・製本会社、取次・書店、広告代理店等を介して自社製品を作り、読者(顧客)に届けます。つまりコンテンツ製作に特化集中しているわけです。従って企画力、編集力がすべて。全社員が、役割に応じてコンテンツ製作に協力し、会社の総合力がコンテンツの水準を決定することになります。その意味では、映画の制作スタッフ、サッカーや野球のチーム、登山のパーティ等になぞらえることができるでしょう。
ここまでは各出版社共通して言えることですが、わが社の場合、これはとりわけ重要なファクターです。なぜなら、文藝春秋の出版活動(コンテンツ)は、政治・経済から歴史、事件、映画演劇、スポーツに至るまで、各ジャンルを横断し(月刊「文藝春秋」の目次参照)、できるだけ多くの人の感じ方、考え方を包括したうえで、「形」にすることだからです。いわばスペシャリスト(深い知識)とジェネラリスト(広い知識)の共存、両立を目指しているわけです。志望動機として、特定の窓口があったほうがいい、同時に社の概容についても知ってほしいというのは、このことに関係しています。
「(教育とは)『皆と同じことが言えるか、他人と違うことが言えるか』を問うことである。前者しかできない者を『凡人』と呼び、後者しかできない者を『変人』と呼ぶ」(妹尾堅一郎)という指摘があります。
私たちが求めるのは、「皆と同じ」と「他人と違う」とを両立させたいと考えている人たちです。自分の好きなことしか興味のない人は「変人」にならざるを得ない。が、とりたてて好きなこともなく、何となく面白そうだと思って応募する人は、オリジナリティのない「凡人」に留まってしまいます(こっそり申しますと、若いうちは「変人」であるほうがずっと好ましいですね)。
人は年齢や環境の変化によって変わっていきます。しかしまた、変わりようのない自分もあるでしょう。会社も同じで、時代と共に変わるべき部分、変わらざるをえない部分と、変わらない、変わってはいけない部分とがあります。出版界は長期間、厳しい状況に直面していますが、文藝春秋も「変人」「凡人」の道を歩むことなく、変わっていかねばなりません。しかし、確固として変わらない部分を持たなければ、人も組織も決してよき方向には変われないのです。
皆さん、文藝春秋にぜひ入社して、大いなる刺激を与えてください。本と雑誌の変わらない魅力をどのように伝えるか、そのためにはどんなふうに変わるべきか。ぜひ一緒に、将来の像を作っていきましょう。