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松本清張賞作品募集

文学新人賞を目指すあなたへ 石田衣良×桜庭一樹対談

新しい作家たち、目覚めよ!

石田衣良×桜庭一樹

次回より松本清張賞の選考委員を務めることになったお二人に、作家を目指す人たちへのアドバイス、そして今、求められる小説について 語り合ってもらった。

――お二人には、松本清張賞の選考委員を、第十九回よりお引き受けいただくことになりました。あらゆるエンターテインメント・ジャンルから幅広く新人を発掘できれば、と考えています。本日は「小説家を目指す若い人たちへ」といったテーマでお話をうかがいたいと思っておりますが、まずは、改めてお二人のデビューのときのことをお話しいただけますでしょうか。

石田   僕のときには既に「公募ガイド」という便利なものがありましたから、順番にマルをつけていったんです。直近が角川の日本ホラー小説大賞で、次が新潮社の日本ファンタジーノベル大賞、それから朝日新人文学賞。その後が小説現代とオール讀物がほぼ一緒の時期で、オール讀物のほうがちょっと遅かったのかな。そうして順番に応募していって、最初の三つは三回とも最終選考まで行ったんですね。最後に書いたミステリーが、実は小説現代のほうに間に合わなくて、オール讀物に出した。それが『池袋ウエストゲートパーク』です。九七年ですよね、オール讀物推理小説新人賞をいただいたのは。三十七歳のときでした。

桜庭   私はほんとにチキンで、大きな賞は獲れないと思ったので、第一回ファミ通エンタテインメント大賞というマイナーなところに、ここなら獲れるかなと思って出したら、佳作で無理やり引っかかりました。第一回は二百人も応募がなかったそうです。中村うさぎさんが選考委員にいらして、推してくれてギリギリ入選して、デビューできたんです。だから、新人をデビューさせて育てる、というノウハウがまだほとんどないときだったので、獲った後が大変でした。

石田   でも、賞の第一回目って、不思議といい書き手が集まるんですよね。それは賞の大きい小さいは関係なく。だから第一回って、その賞の行方を決めることがあると思う。でも、大変失礼な話なんですけど、ある文学賞のパーティーで先輩作家に言われたことがあって、「昔は、賞に応募するんだったら一年ぐらいはその雑誌を熟読して、選考委員のこの人に読んでもらいたい、と思って応募するものだったんだよ」と。僕は選考委員が誰かを全く知らなかったですし、もちろん後で確認して、「ああ、この人の作品を読んでいる」というのはありましたけど、オール讀物もほんとに読んだことがなかった(笑)。

桜庭   私は、自分が読んで好きな作家さんのところに応募したほうがいいかな、とも思います。私の場合、中村うさぎさんを読んでいて、面白い人だと思っていたら、その人が褒めてくれた。小説も武道で言う流派みたいなのがいろいろあるから、この人の作品が好きだと思っている人のほうが分かってくれる気がします。

石田   そのへんは難しいんだよなあ。あまりにも近いと、かえって厳しくなりますよね。時代小説の作家は、時代小説に対してほんと厳しいですから。なので新人はあまり、これが有利になるとか、受験技術みたいなことを考えないほうがいいですよ。

桜庭   あっ、聞かれますね。「この賞の傾向は?」とか「どういうふうに書いたら有利ですか?」「一人称と三人称ではどちらが評価されやすいですか?」とか。いや、それは小説によるし、どちらが評価されるということはないので、その話に向いているほうで、と言うと、納得できない顔をされたりする(笑)。

石田   みんな簡単な答えとか、近道があると思っているのがよくない。

桜庭   「マニュアルないんですか?」と聞かれたこともあります。文学賞を獲りやすいマニュアルって……。

石田   そこはもう、ちょっと考え違いを改めてほしいところですよね。

桜庭   自分の話になりますけど、デビューした後もあまり仕事がなかったし、出した本も売れないという迷走期間があり、やっぱり傾向とかばっかり考えていたことがあったんです。これが受けるのかな、こうしたらいいのかな、と他人の真似ばっかりしていた。その時期に中村さんとまたお会いして、「最初にあった良いところを伸ばしなさい」みたいなことを言っていただいて、その後は他人の真似をせずに書くようになったということがありました。

石田   傾向と対策を学習するのはほんとに無駄だと思いますね。分かるんですよね、ここを狙って書いたな、みたいなことが。やっぱり自分が「これが面白い」というところ、それをしっかりつかんだら、手放さずに最後まで書いてほしい。じゃあ、そうなると圧倒的にオリジナリティが必要か、と思ってしまうでしょうけど、みんなちょっと怖がりすぎなんです。ハッ! と新鮮に感じることだったり、組み合わせの妙があったりすれば大丈夫。要は“新しいこと”じゃなくて“新しい感じ”でいいんですよね。だから、これは王道だからいけない、とかあんまり考える必要はない。逆に王道であるなら、そこからさらに熱量とかキャラクターの魅力とかをプラスしていけばいい。

桜庭   新人だけが持っているものってあるじゃないですか、熱量とか毒気とか。やってやるっ! みたいなものは最初ほどあるものかもしれない。他の作家と話したときに、「現在のほうが書く物はうまいけど、今は新人賞に応募しても獲れる気がしない」と言っていた人がいました。最初に持っているものをすごく大事にして、一気に行くべきだと思います。中には、もう十年選手みたいに応募し続けている人がいる。そういう人の作品を読むと、整ってはいるけど、この人の最高傑作ではない感じがして、おしいけど推しきれなかったりします。

石田   ずっと期待されて獲れなかった人が獲ることもあるけど、そういうパターンのときは、たいていもう一段ジャンプしています。それまでとちょっと作風を変えてきたり、「これを書いたら、もう最後でいい」みたいに、どこかで踏んぎりをつけて書いてきている人。


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